「ねえ、バーサーカー。あのサーヴァントは生きていると思う?」
「・・・」

少女の傍にいる巨人は何も答えない。ただ静かに佇んでいる。

「そう、やっぱり生きているのね。」

それでも少女は巨人の意思が伝わったらしく静かに話し続ける・・・

「あんな滅茶苦茶なことで私のバーサーカーを2回も殺して逃げるなんて・・・

あいつは一体何者なの・・・それに・・・」

 

−朱き月は舞い降り祖は落ちる、死の境地にて吾は今―


あの時はバーサーカーに邪魔をさせ詠唱を中断させたので助かったのだが少女は

最後のスペルが気になって気になっていた。

「あーあー、こんなことなら最後までやらせれば良かったな。」
「・・・」
「わかっているわよ、バーサーカー。あんなの食らっていたら多分・・・」

自分は死んでいた・・・

あのアサシンはどうやったかわからないが冬木大橋をたった一回の攻撃で木っ端

微塵に破壊した。それだけでもあの詠唱の技を舐めてはいけない。
白い少女、イリヤスフィールはアサシンを見てそう思った。

「ふん・・・まあいいわ・・・あのサーヴァントに直接聴けばいいからね・・・

そう結論についたイリヤスフィールは踵を返し都外の森に向けて歩いていく、

「まあいいわ、あのアサシンには興味が沸いたからまだ殺さないで生かしておい

てあげる。」
イリヤスフィールは最後に一言だけ呟き壊滅した冬木大橋から居なくなった・・

 

 

七夜と華と運命と
騎士の誓い

 

 

アサシンは今腹部と背中を深く負傷して休んでいる。
私は彼が眠るまでここでずっと見張っていた。

「はあ・・・なぜここまで無茶をするのでしょうか・・・」

彼はバーサーカーの斧剣からカレンを守るために自ら盾となりその身を負傷させ

た。それはまだいい。しかしバーサーカーの攻撃から私を守る時でさえ私を抱き

かかえ自らの背中を盾にして
庇った。

その傷は外套によって隠れてはいたが血が大量に出ているため私にはすぐにわか

った。

それなのに彼は・・・

「吾は他のサーヴァントから襲ってくるかどうか解らないから屋根の上で見張り

をしておく。セイバーは凛とカレンを看ていてはくれないか?」

これにはさすがの私も怒る。
彼は自分の身のことをあまりにも考え無さ過ぎる。その身体で見張っていたとし

てもそれが本当にマスターのためになるのか!!
私は彼にそう怒鳴りつけ文句を言ったのにもかかわらず引こうともしない。その

あまりにも頑固な姿勢に私は最後の手段を使う。

「さすがにやりすぎましたね・・・」

・・・今アサシンは気絶して布団の中に縛り付けて置いている。

結局気絶させるという方法しか無く、こうして傷が癒えるまでは見張っていると

いう現状な訳である。

「セイバー、アサシンの様子はどうですか?」

気が付くとカレンが私の横まできてアサシンの方を見ています。
縛りつけている今の現状を見て勘違いされないように説明だけはしなくてはなら

ない。私はカレンにこの状態を説明します。

でも・・・

「・・・まあ仕方ありませんね。」

彼女自身はアサシンの性格の事を知っていたのでしょうか。あまり深くは疑問に

思っていなかったようです。

しかも彼女の眼の辺りが妙に赤かったのは気のせいなのでしょうか・・・

「ねえ、セイバー・・・」
「なんでしょうか?カレン。」

彼女から話しかけてくることは珍しい・・・一体どうしたのでしょうか・・・

「貴女はなぜアサシンのことを気に入っているのですか。」
「・・・は?」

「何故ですか?」

い、今はそんな事は関係の無い話だったのでは?

「カレン・・・今は・・・そんな事・・・」
「お願いです、答えてください。」

なぜ・・・そんな事を貴女は真剣な顔をして聞くのですか・・・

「答えて・・・ください・・・。」

「はあ・・・わかりました・・・」

結局私はアサシンの事を気になるきっかけになったときの話をするのでした・・

 

 

 

周りは煙幕で包まれている中、私は身動きが取れない。リンは・・・リンは大丈

夫なんでしょうか?

「大丈夫か?」

私の右手が急に自由になるとそこには私の衣服から短剣を抜いているアサシンの

姿がそこにありました・・・どうやらマスターの姿はもう居ない・・・おそらく

離脱したのしょう。

「まだクナイが刺さっている。今抜くからちょっと待っていてくれないか?」

暗殺者の言葉など信用できない。たとえこの場を去ったとしてもまた不意打ちさ

れては堪らない。その例がこの今回の失態。ここで逃がしてはいけない。
私は聖剣を自由になっている右手に持ち替えアサシンの肩目掛けて振り下ろした

ザシュッ・・・・

「なっ・・・」

肉に刺さる鈍い音とともにアサシンは一瞬仰け反るのですが・・・

「・・・」

剣が刺さったまま、血が吹き出ているのにもかかわらずアサシンは私から短剣を

抜きリンからも短剣を黙々と抜いています・・・

「なぜ・・・なぜなのですか!!アサシン!!!
「なぜ・・・とは?」

全ての短剣を抜き終えたアサシンは剣を刺した私に対して何もしない・・・。
なぜ・・・短剣を抜いていただけなのに関わらず不意打ちした私に対して何も憎

まないのですか!!

アサシンが後ろを向いて剣を抜いて血を吹いているのを見て私はそのことばかり

考えていた・・・

「なぜ・・・戦闘の意思の無い貴方に剣を向けた私に対して貴方は何もしない!

!」
「・・・」
「答えてください!!」

「・・・理由など必要あるのか?」

何をいっているのか・・・この暗殺者は・・・私が聞きたいのは・・・

「・・・なぜ・・・貴方は刺されたというのにそんな穏やかな顔をしているので

すか・・・」
「・・・」

アサシンは剣を渡しに返すと今度は自分の傷を治療するために眼に覆っている包

帯を外している・・・

「たとえ何をしようがそれは信用されなかった吾が悪い・・・吾はそう思う。そ

れで死ぬのなら仕方が無い・・・これでは駄目か?」

包帯を外し終え眼を開いたアサシンの眼を見た私は・・・

 

その蒼く光輝く眼に・・・心を奪われた・・・

 

「そんなことで・・・貴方は・・・」
「本当に理由はそれだけだ。だからお前が悩む必要が無い。・・・ああそれと・

・・」

彼は外套から新たな包帯を取り出す。包帯を眼に巻く前に最後に彼は少年のよう

に微笑んだ・・・

「心配しないで・・・こんなので俺は死なないから、」

彼は本当に無邪気に笑う・・・その顔は本当に綺麗だった・・・

「ではな、セイバー。最後に君のマスターに手荒な事をしてすまなかった。と伝

えてほしい。」

彼は跳躍してこの場から居なくなってしまった・・・

私は彼が去った後もそのことばかりをずっと考えていた・・・

 

ちなみにすべて煙幕の中だったのでこの事はだれも気づかなかった・・・

 

 

 

「そんな事があったの・・・」
「ええ、彼はその時の傷も治ってはいない。だから気絶させて休ませるしかなか

ったです。」

気絶した彼を治療した時にその時の傷も治ってはいない。いくらサーヴァントだ

からといっても休ませなければいけなかった。

「・・・だから貴女は教会の時アサシンに対して好意的だったのですね。」
「・・・///」

・・・言わなければよかったのか・・・今になってちょっと恥ずかしい・・・
でもカレンは真剣な表情を崩さない・・・まだ何か言いたいことがあるのか・・

「セイバー・・・貴女は今から話す事を他言無用でお願いできますか?」
「えっ?」

いきなり何を・・・

「アサシンとの事を聞いて彼のことを解っている貴女を信じて話すことがあるの

です。私の話を聞いてはくれないですか?」

「アサシンのことですか・・・」
「はい。」

・・・まだ彼のことに関して何かある・・・あの時私を信じ、怪我をしてまたバ

ーサーカーから私をも守った・・・そこまでして無理をする彼の事が知りたい・

・・

それにまだ私は助けてもらった恩を返してはいない・・・

「わかりました。けっして他の人には言いません。騎士の名にかけて」
「・・・では、」


私は聞かれないように場所を移すカレンに付き従い移動するのだった・・・


続く