「一体どうしたのよ・・・」
私はセイバーとアサシンの居る部屋の所に向かいカレンの様子も事を考えていた。
恐らく彼女はアサシンのことが心配になり急いで彼の元に向かったんだろう。
そんな彼女を自分は慰めることもできず、ただ見守ることしかできない。
「はあ・・・セイバーといいあの子といい・・・私も甘くなってしまったのかしら。」
今ならアサシンも負傷していてカレンから令呪を奪うことも容易い、しかしそんな事は自分はしたくはないし、セイバーもそんな卑怯な事をしたくはないだろう。
今が絶好のチャンスだというのに・・・
「心の贅肉ね・・・」
アサシンの居る部屋の襖を開けると其処にいるのは彼一人だけだった。
「腹部と背中、肩・・・何処でこれだけの傷ができるのかしら?」
凛はアサシンの着物をはだけさせ刺し傷に止血パットを付け、切り傷には消毒し縫合した後、魔力を込めた宝石を彼の口にもっていこうとするが・・・
「・・・俺はなぜ縛られている?」
アサシンはその場で眼を覚ました。まあ私にはやましいことなんてなかったからすぐ返答をしたのだが。
「おはよう、とりあえずあんたの傷を治したいのだけどいいかしら?」
七夜と華と運命と
幼き日に出会った少年
彼はその後全てを失い、それを奪った者達に利用された。
利用されつつも平穏に暮らしていたのだが事件は起きた。
其処の家の兄が反転・・・魔物寄りになる
その反転した少年が自分の奪ったその奪った家の妹を助けるため彼は自らが犠牲
になる。
幸い命は助かるがその後少年は命が吸い取られ続ける。
家を追い出されしばらくしてからまたその家に呼び出される。
そして事件は起こった。
今まで彼に吸い取られる命の代わりに生命力を供給していた妹が突如反転した。
少年の命を吸い取っていた兄の命を奪ってからおかしくなってしまった。
少年は必死に辞めさせようとするが彼女の耳には届かず逆に自分の生命力を切り取られる。
少年は今にも死にそうになるなか少女と妹と昔に出会った少女のために世界と契約し守護者になる。
この先強大な敵から世界を守るための条件とともに彼は英霊となった。
その後、守護者として戦い続けた長い時間のなか、磨耗して自分に関する記憶を無くしてしまったことも・・・すべて話した・・・
「これが私の夢で見たアサシンの記憶です。」
「・・・」
多分彼は七つ夜が媒介になって召喚された英霊・・七夜志貴・・・
私はセイバーを信じ彼の事をすべて話した。どんな返答が返ってくるかわからないが彼の事を知って欲しかった。
彼の事を勘違いしないで欲しい・・・・
ただそれだけを思いアサシン・・・七夜志貴であろう彼の事を話した。
「セイバー?」
「・・・」
セイバーは何も言わずに部屋から出て行ってしまった。一体どうしたのだろうか
・・・
「・・・信じてほしい、と言うのが無理なのでしょうか・・・」
私はそう思いずっと佇んでいた・・・
「これで、終わり・・・どう?」
「ああ、問題ない。ここまで治れば後は自然治癒で復元できる。」
「そう、よかったわ。」
アサシンの治療を終えた私は彼の縄を解きその隣に座っていた。まだ立ち去らないのはこいつの所にきた用事が済んでいないからだからだ。
「それでアサシン。聞きたいことがあるのだけどいいかしら?」
「聞きたいこと・・・?」
「ええ、治療をした代わりに・・ね、」
こいつには色々聞かなければいけないことがある。たとえば。
「貴方、あの時橋を木っ端微塵に破壊したわよね?あれ一体どんな手でやったの?」
「・・・」
「言っとくけど黙秘、てのは無しよ。治療をした分は話してもらわないとね。」
「等価交換・・・てことか?」
「ええ、魔術師たちのルールよ。」
同盟を組む以上こいつの実力は知っておきたい。あのバーサーカーにだって戦うことができるこのサーヴァントの戦力を知らなくてはいけない。だからこの場でこいつの能力だけは知っとかなくてはいけない。
「・・・はあ、参ったな。答えたいのだが吾は自分の事が良く解らない。だから
別のことにしてくれれば助かる。」
「自分の事を知らない?それってどういう事?」
「ああ、それはな・・・」
何だろう・・・すごく嫌な予感がする・・・
「吾は記憶喪失だ。」
・・・
「ヘッ・・・・?」
「だから記憶喪失だ。」
「・・・マジ?」
「本気だ。」
どうしよう・・・こいつが解らないっていうのならカレンが知るはずないし・・
・
このままじゃ無料でこいつに治療をしただけになってしまう。
「すまない・・・だが、必ず恩は返す・・・」
どちらかというとバーサーカーの時、私が貴方から助けられたのだけど・・・
「困ったわね・・・」
こいつの事が知りたかったのだが仕方がない。私はここで引き返すとしよう。
まだ悩んでいる問題が山積みなのに・・・
「・・・ん、まてよ・・・」
もしかしたらこいつは使えるのではないか・・・
「はあ・・・」
カレンから彼の話を聞き部屋から居ても経ってもいられなかった私は今屋根上で見張りをしていた。正直気分が滅入っていたので外に出て気分転換したかったのかもしれない。
まさかアサシンにあんな過去があったのなんて・・・
自分とは違いアサシンはどういう過程で英霊になったのか気になっていたのだがまさかこれほどまでにひどい過去だったとは知らなかった・・・
なにより彼は大切な人を守るために戦い自分自身が何一つ報われない・・・
「・・・」
彼はそれでも自分を削り人の為に戦い続ける・・・
大事な人を守るために・・・
たとえ自分自身がどうなってしまっても・・・彼は戦う・・・
「自分はとんでもない人に出会ったものですね・・・」
アサシンもそうだがカレンも変わった人だった。
まさか自分を信じ昔のことやアサシンの過去のこと・・・
そして何より・・・
「普通英霊の真名を他のサーヴァントに言いますか・・・」
アサシン・・・七夜志貴をよほど救いたいのだろうか・・・
彼女の気持ちも解る・・・自分も彼をできれば幸せにしたい・・・
「何を考えているのか・・・」
まだ彼と自分は会ったばかりではないか・・・それにお互いサーヴァントだ・・・
「はあ・・・一体・・・ん?」
考え事をしていると家の中から見知った姿が一つ・・・
あれは・・・凛?
それに後ろで霊態化しているのはアサシンではないか・・・
一体どこへいくのでしょうか・・・
「私を付けずに一体どこへ行くのですか・・・」
私は急いで家の中に戻り後を追いかける準備をするのであった・・・
続く