死の淵にて今を生きる・・・

少年が過ごした人生はそれに等しい生き方だった。

その少年が夢を見て望んだこととは・・・

とても儚い夢・・・

英霊となった後もそのためにただ自分の身を削り・・

時には自らの信念まで否定され・・・

自分の妹すら殺し

親友を殺してまでも戦い続けた。

その後二十七祖をたった一人で戦う人生・・・

やがて少年は真祖にて最強の存在を倒した時

最凶の存在とまで言われるようになった・・・

それがこの英霊・・・

殺人貴とまで言われた■■■■だった・・・

 

 

七夜と華と運命と
少女と殺人貴

 

 


意識が覚醒した時・・・

眼に映ったのはどこかの廃墟みたいな所だった。

「ここは・・・」

吾はバーサーカーを地盤沈下させ土砂崩れに巻き込ませた後気絶したはず・・・
なぜ生きている?

そもそも吾はもう魔力が消え果てているはず、だが何故こうして現界して動いているのか?

「お目覚めですか?」

声がする方向を見るとそこには・・・

「動かないでください。所詮応急処置・・・下手に動くとまた傷が開きます。」

我がマスターであるカレンがそこにいた・・・

「血を飲ませたことにより一時的に魔力も回復はしていますが・・・長くは持ちません。」

よく見るとカレンの手首には包帯が巻かれている。その姿は痛々しい。

「ところでアサシン・・・聞きたい事がいくつかありますが良いですか?」

表情を見る限りは何も感じないのか?

「ああ良い・・・・」

パシン!!

「何故叩く・・・」

何故叩く・・・

それに・・・

その眼からは・・・涙がでているのだ・・・

何故・・・カレンは泣いているのだろう・・・か

 

 

 

 


「何故!!あんな・・・あんな事をしたのですか!!」
「あんな事とは?」
「私を気絶させてバーサーカーと戦ったんです!!」

あの時・・・何故貴方は・・・

「殺さねば・・・殺さねば生き延びれない。その事をわかっているのか?」
「そんな事はわかっています!でも・・・でも・・・」

この英霊は根本的な事から外れている・・・

「マスターが死ねば吾らサーヴァントも死ぬ。それは当たり前な事、それなのにサーヴァントを庇いカレンが死んでは本末転倒。だからこそ吾が奴を引き離した。」
「そんな事はわかっています!!私が・・・私が聞きたいのは!

「・・・」

「何故貴方は自分の命すら平気で捨てるって事です!!」

「それは・・・」

「私を守るためですか!?でも・・・そんな事で守られたとしても嬉しくなんてありません!!」

もはや感情の抑制ができなくなったのか私は彼に言いたい事を全て吐き出す・・・
彼には言ってはいけない事も・・・全部・・・

「だがバーサーカーに殺され「それでもです!!」・・なんだと?」
「ええ!それで貴方が死んでしまえば守られた私としては全然嬉しくなんてない!!残された人にとってはそんな事されても悲しむだけです!!」

「だとしてもそれは仕方がない事だ。」
「だからそれが・・・駄目なのです・・・」

それでも私は言わなければならない・・・

「何故・・・」
「自らを捨て人を守る・・・」
「・・・」

「それが・・・貴方の生きてきた道だとしても・・・私は認めたくないから・・・」
「・・・何を・・・・言っている・・・」

たとえ記憶が無いのだとしても・・・

「貴方の記憶を・・・私は夢という形で見たのです・・・だから貴方の事を知った・・・」
「吾の・・・記憶・・・」

言わなければいけない・・・この・・・

「七夜志貴、貴方はそんな事のために英霊になったのですか?」
[・・・]

七夜志貴に向けて・・・

「志貴の記憶はまだ戻っていないかも知れませんが・・・ここで今言いたい事を言います。」
「・・・」
「貴方がそんな風にすぐ自らの命を捨て他人の事のために死んでしまう・・・それでは貴方の事を思う人は救われません・・・親友を殺してまで救ったとしても・・・自らを思わない貴方は救われない・・・」
「吾は・・・」
「そんな人に助けられてもその人は・・・救われない・・・」
「・・・」
「それを・・・分かって欲しい・・・」

「だから・・・志貴・・・」
「・・・」
「自分の事をもっと大切にして・・・」

アサシン・・・いや、七夜志貴に向けて全て・・・言った・・・
そうでもなければこの人は・・・

これからもずっと傷つき・・・ただ戦い続けるだけの悲しい存在になってしまう・・・

それだけは・・・嫌だ・・・

 

 

 


話す事もなくなったのか私と志貴はただ向かい合いながら立っているのみ・・・

その状態がしばらく続くかと思っていたが先に口を開いたのは志貴の方でした。

 


「・・・カレン。」
「なんですか?」

「吾は・・・まだ記憶が戻っていない部分が多い・・・故に自分がそういう人間かどうかもよくわからぬ。」

「・・・」

「たとえカレンが自分を犠牲にするなと言っても吾は貴女を守るためにその身を捧げるだろう。」

「それでは・・意味が「それでもだ。」・・・」

「吾はサーヴァント、主の盾となり影となり貴女を守る。」

「それはサーヴァントとしてで・・・」

「そうだ。今の吾はそのために生きている存在、それだけは覆せないだろう。」

「・・・」

「故に吾はいつでも貴女のために身を捧げるだろう。」

そうですか・・・結局・・・変わらないのですか・・・

それでは・・・あまりにも報われない・・・

 


志貴・・・


「それでは・・・意味は無い・・・」

視界が霞む・・・

ああ、そうか・・・

気が付いたら・・・私の目から涙が出ていたのか・・・

 

 

「・・・カレン。」
「・・・なんですか。」

「お願いがある。」

「いきなりなんですか・・・?」
「まあ聞いて欲しい。」

なんの・・・お願いですか・・・?

「聞きましょう。」
「・・・では、」

「先ほど吾はカレンのサーヴァントとして守る・・・と言ったな。」
「ええ・・・」

「では今から言う事はサーヴァントとしてではない。」
「?」

「先ほど吾の事をナナヤシキ・・・と言ったな?」
「ええ・・・」
「そうか、なら・・・」

貴方の真名は・・・確信していましたから・・・

でも何故そんな事を聞くのですか・・・?

「・・・吾・・・いや、俺はカレンだけはナナヤシキの名に賭けて最後まで守り通す。だから泣かないで欲しい。」

 

え・・・?

 


「何を・・・いきなり?」
「吾にもわからん、今のカレンを見たら何故か言いたくなった。だから・・・」

私を見たら・・・?

「泣くな。」

志貴はそう言いながら私の涙を拭ってくれた・・・

「・・・」

・・・

泣くな・・・

ああ・・・そういう事ですか・・・

多分・・・不器用だけど不器用なりに私を慰めようとしてくれているのだろう・・・

まるで・・・あの時の彼みたい・・・

記憶が戻ってはいないけど・・・根の部分は彼と同じ・・・という事なのですね・・・

「全てが終わったのなら愚痴や文句を聞いてやるから。」
「なんですか・・・それ?」

「言葉通りの意味だ・・・」
「クス・・・」

ああ・・・この人は本当に頑固だ・・・きっと何を言っても変わらないのですね。

「わかりました。その願いを聴きましょう・・・今は何も言いません。」
「ありがたい。」
「でも・・・」
「でも?」

本当に困った人・・・仕方が無い人です・・・頑固で・・・とても優しい人・・・

「全てが終わったら問答無用で言及しますから覚悟しておきなさい。」

「ふっ・・。了解した。」

とりあえず・・・今はこの事を保留にしといてあげます。でも・・・

 


いずれきっちりと貴方に対して言います。

 

 

私は貴方が・・・

 

 

 


好きですから・・・

 

 


続く